阿薩姆紅茶
阿薩姆紅茶(あっさむ-)は台湾全土で栽培、生産されるお茶で、紅茶専用品種の1つです。
阿薩姆とはインドの「アッサム」の当て字で、その名の通りインド・アッサム地方から持ち帰ったアッサム種の茶樹のことをいいます。
阿薩姆を元に様々な茶樹との交配が行われるなどして品種改良は現在も続けられており、台湾紅茶のルーツとも言える品種です。台茶7号や台茶8号も阿薩姆紅茶と呼ばれることがありますが、それらは阿薩姆紅茶を品種改良してできた別品種で厳密には別物です。
この紅茶の歴史は日本統治時代の1930~1940年頃にまでさかのぼり、日本人農業技師「新井耕吉郎」(日東紅茶の前身である三井紅茶の祖)が、インド北西部のアッサム種の茶樹を台湾に移植し、台湾紅茶試験支所(1936年設立)に於いて品種改良を進めたものです。当初は台湾東部の鶴岡地区をはじめ日本政府主導で紅茶の生産が大規模にすすめられ、外貨獲得のための輸出用産品として一大産業に発展しました。
しかし、戦後暫くして台湾の経済発展に伴う通貨価値の上昇や、元々特徴に欠けるお茶であったために国際競争力が急速に低下。多くの阿薩姆紅茶を生産する茶園が閉鎖に追い込まれたり、柑橘類の文旦など他の作物への転作が進められました。現在も一定の作付面積はありますが、より商品価値の高い烏龍茶や新しい紅茶品種への転換が進み、年々生産量は低下しています。
品質の面では品種改良された一部を除き総じて低品質なため、また風味に乏しいため紅茶としての人気はあまりありません。
しかし、製菓材料や加工品用、増量用として使われたり、台湾の街に至る所にあるティースタンドでアイスティーやミルクティーなどのアレンジティーとして安価で気軽に買うことができ、台湾国民の生活に広く浸透した紅茶でもあります。現在も台湾東部の一部地域では、街の食堂には必ず非常に甘くした阿薩姆紅茶が置かれているところがあります。日本国内でも「台湾阿薩姆」や「アッサム紅茶(台湾産)」などとして流通しています。