ダージリン

ージリン(Darjeeling)はインド北東部、西ベンガル州ダージリン地方原産の紅茶産地です。
「ダージリン」とはチベット語で”雷の地”を意味する「ドルジェリン」が変化したと言われています。
旧来から避暑地としても有名で、ヒマラヤ山脈が一望できる景勝地でもあります。

栽培される標高は300~2400m付近でシワリク丘陵がその中心にあり、87の茶園がしのぎを削っています。
ダージリンは茶園ごとに味や風味はもちろん、品質に大きな差があり、最も有名で良質な茶葉を産出するキャッスルトン茶園でも標高1350~2300mと、標高差がおよそ1000mもあることから、同じ茶園でもロットにより、品質が大きく異なります。

キャッスルトン、ジュンパナ、マーガレッツホープ、アリヤ、ピュッタボンなどブランド化された茶園が多くある一方、全量を欧州のメーカーが買い上げている茶園や、全量が増量用やブレンド用にまわされ、市場にはでない茶園もあります。

“紅茶のシャンパン”“紅茶の王様”と呼ばれ絶賛されている人気の高い紅茶で、世界三大銘茶の1つにも数えられています。
多くの茶園のなかでも、キャッスルトン茶園が最初に開発したとされる”マスカットフレーバー(マスカテルフレーバー)”と呼ばれる香気を持つお茶は、茶葉自身から立ち上る独特かつ非常に高貴な芳香が特徴です。この特徴的なフレーバーは、茶樹に発生する害虫である「ウンカ」による食害により作られる独特の香気で、同じくウンカの食害を利用して作られる台湾の東方美人茶と香りの性質がよく似ています。このウンカは、いつ・どこから発生するのか、いまだ解明されておらず、良いお茶ができるかどうかは自然の成り行きに任されます。

種の多くは中国種とアッサム種の混在種ですが、中国種あるいはアッサム種それぞれから作られる物もあり多様性に富んだ紅茶です。水色は淡いグリーンをしたものから、濃いオレンジ色をしたものまで様々あり、シーズンや発酵強度で大きく変わります。茶葉の形態は、基本的にはカットされないフルリーフタイプですが、一部ではブロークンタイプが生産され、その他にCTCやガンパウダータイプもごく少量生産されています。茶の芯芽部分、いわゆるシルバーティップ(産毛の生えた葉)を多く含む物が良質かつ高価な茶葉です。
また、ごく少量ながら緑茶、青茶、白茶なども生産されていますが、いずれも非常に高価です。

ォリティーシーズン(最もよい茶葉が産出される季節。いわゆる旬の季節。)は夏摘みが出荷される5月中旬~7月中旬ごろ。
ダージリンはシーズン毎に独特の呼び方があり、
・3月中旬~4月下旬ごろ摘まれる若々しい風味が特徴の春摘み「ファーストフラッシュ」
・5月中旬~7月中旬ごろ摘まれる独特の花香”マスカットフレーバー”を持ち、最も良い茶葉が産出される夏摘み「セカンドフラッシュ」
・7月中旬~9月下旬ごろ摘まれるものを「モンスーンフラッシュ」(8月までに摘まれた物はセカンドフラッシュとして出荷される事もあります)
・10~12月上旬ごろ摘まれる香ばしく厚みのある茶葉が産出される秋摘み「オータムナル」
があります。

般的に紅茶は100度の沸騰したお湯で抽出しますが、発酵の浅いファーストフラッシュダージリンは85度程度のやや低めのお湯で抽出すると旨味が引き立つものもあり、奥の深い紅茶です。多くはストレート向きで、砂糖やミルクなしでストレートのまま味わって頂きたい紅茶ですが、秋摘みダージリンなどしっかりした味をもつダージリンは、少量のミルクであれば相性が良く、独特の花香が引き立ちます。

日本人好みの爽やかな口当たりで、透き通ったオレンジの水色は非常に美しいのですが、高価な茶葉が多く、キャッスルトン茶園に代表されるマスカット香のある有名茶園の茶葉は5000~10000円/100gという値が付きますが、ダージリンファンにはたまらない逸品です。
ファーストフラッシュと呼ばれる春摘みのダージリンは比較的浅い発酵で仕上げた物が多く、茶葉の色のおよそ紅茶とは掛け離れた美しいグリーンの色をしています。柑橘系の爽快感のある風味をもち、特に日本とドイツで人気があります。

かし、世界中に流通するダージリンを名乗る茶葉は実際の生産量の実に20~50倍と言われ、90%以上が偽物という有様です。ダージリンを数パーセントだけ加えたものから、ダージリン産茶葉を全く含まないものまで様々で、それらが流通するときは「ダージリン」の名前を冠して缶詰めされて売られているために見た目で判断ができません。また最近では人工香料でマスカットフレーバーを再現したものまで多く流通しており、信頼のできるショップで購入することが大切です。

年、ダージリン地方では茶摘みなどに従事する労働者による、労働環境改善を要求する運動が盛んに行われるようになりました。
また、多くの茶園で茶樹の樹齢が150年を越えており、新しい茶樹への植え替えが殆ど進んでおらず、この20年間のあいだにダージリン全体の生産量は30%も低下しています。茶園により品質差も大きくなる傾向にあり、今後の茶園経営の改革が望まれています。

セカンドフラッシュ(夏摘み)ダージリン。
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ファーストフラッシュ(春摘み)ダージリンのなかでも最上級クラスのもの。
比較的発酵が浅く、ティップ(芯芽)の含有量が非常に高い。
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重発酵させてゴールデンティップに仕上げた、珍しいダージリンの茶葉。
ダージリンHimalaya