香片(茉莉花茶)

片茶(かへん-、しゃんぴん-)はジャスミン茶のことで、台湾や中国大陸で広く生産される花茶、フレーバーティーの1つです。
台湾では「香片」と書かれる事が多いですが、他に茉莉花茶(まつりかちゃ、もーりーほあちゃ)、茉莉緑茶とも呼ばれます。日本でも”ジャスミンティー“の他、”まつりか茶“や、沖縄では”さんぴん茶“と呼ばれ、”さんぴん茶”は台湾の香片(しゃんぴん)の呼び方が転じたものです。

くからあるお茶ですが、本来は香りや風味に乏しくそのままでは売り物にならない茶葉にジャスミンの香りをつけて飲んだのが始まりです。良質な茶葉が作れなかった清朝時代の台湾では、香片茶にするための茶葉を大量生産し中国大陸へ輸出していた時期がありました。生産される茶葉のほぼ全量に相当する量が、香片茶に加工されていた時代もあります。そのような過去もあり、台湾では香片茶は三流品の扱いを受けることが多いのですが、手間を掛けた上質な香片茶は高値で取引されるなど、決して悪いお茶ばかりではありません。

来の作り方は、製茶した緑茶とジャスミンの花びらを布や紙を隔てて交互に重ね合わせ、自然に着香させていきます。
この工程は1回や2回では不十分なため、回数が多いほど茶葉に多くの香りが移り風味豊かになります。しかし当然、手間と時間、そして大量のジャスミンが必要となるためコスト高となり、この工程を7回、8回と繰り返した香片茶は高級茶に属し、非常に貴重なお茶となります。このために流通する香片茶のほとんどは手間とコストのかかるこの工程を少なくし、1~2回程度ジャスミンを使って着香させたあとジャスミンに似た他の花や果実を用いたり、なかには人工香料のみが使われ一度もジャスミンを使わないお茶も大量に流通しています。

葉は多くは緑茶が用いられます。中国大陸では烏龍茶や白茶なども使われ、なかには細工をほどこした工芸茶(仙桃など)など手の込んだお茶も多数存在していますが、台湾では散茶が主流です。
本来、台湾の香片茶は台湾産の茶葉とジャスミンを使ったものですが、台湾国内でのジャスミンの生産量が少なくなっているため、中国や東南アジアから輸入した乾燥ジャスミンを使ったり、或いは香片茶そのものをベトナムなどで生産し、台湾では仕上げ工程のみを行う場合もあります。台湾国内でのジャスミン生産地は、彰化県から台南県にかけての台湾西部地域です。特に無農薬栽培された台湾産ジャスミンを用いた香片茶は量が少なく珍重されています。

成した茶葉にジャスミンの花びらを含む物と含まないものが存在します。
“花びらを含む物は低級品”と言われることも多く、輸入乾燥ジャスミンが使われる香片茶はその通りであることが多いですが、グラスでお茶を入れた際の見た目を美しくするために、敢えて茶葉が完成したあとに花びらを加えることもあるため、一概にそうとは言えません。

なお、余ったお茶にガーデニング等で育てたジャスミンの花びらを使って軽く焙煎することで、自家製ジャスミンティーを作ることもできますが、ジャスミンには様々な品種が存在し、全てが食用になるわけではありません。中には有毒なものもありますので、自家製ジャスミンティーを作る時は品種に注意して下さい。

完成後に花びらを加えた香片茶。清香茶が使われている。台湾産は散茶が主流。
香片

花びら以外に萼も含んだ低級品。
香片(つぼみ入り)

中国大陸で盛んに作られている工芸茶。茉莉仙桃茶。
中に菊の花が仕込んであり、湯を注いで待つと開く。味より見た目で楽しむお茶です。
仙桃 (3)

2~4連の菊の花が仕込んである工芸茶。茉莉玉蓮茶。主に中国大陸で作られる。
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珠状に仕上げた茉莉竜珠茶。中国大陸で作られる。
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