祁門紅茶

門紅茶(Keemun、キーマン、キーモン、キームン)は中国、安徽省祁門県原産の紅茶です。
使われる茶品種は祁門櫧葉種、および在来種など様々。
ダージリン、ウヴァにならぶ世界三大紅茶の一つにも数えられます。
ヨーロッパでは「中国茶のブルゴーニュ」と呼ばれ、特に英国では珍重されており、英国王室ではエリザベス女王の誕生日の日に祁門紅茶を飲むという伝統があります。また、中国の国家首脳が海外訪問する際、祁門紅茶を贈り物とする習慣もあるそうです。

ラや蘭にも例えられる芳醇で高貴な香りが特徴で、ややスモーキーな風味が特徴の紅茶です。
良質な祁門紅茶ほどスモーキー感は薄く(或いは全く感じない)、低級品~中級品ほど薫香が強くでる傾向がありますが、敢えてこの薫香に魅せられるファンも多くいます。発酵は深めで、針のように細く強い撚りがかかっているのが特徴です。

茶の生産は1875年頃、安徽省出身の余干臣が福建省での官位を捨て故郷に戻り、福建省の紅茶を真似て作ったところ、オリジナルよりも遥かに美味しく高品質な紅茶ができた・・という説と、胡元龍が貴渓で緑茶の生産を行ったが成功せず、試しに紅茶を作ったら成功したのが始まり、という説の2つがあります。一般的には前者の説が有力とされており、「福建省の武夷山で作られる正山小種(ラプサンスーチョン)を手本に作ったのが始まり」というのはここから来ています。

門紅茶は「祁門で作られた紅茶」であるため、使われる茶品種は様々です。
本来の祁門紅茶は「祁門櫧葉種」と呼ばれる品種でよく作られていましたが、現在はより大量生産と栽培のしやすさなどから在来種が多く使われ、祁門櫧葉種での祁門紅茶の生産は少なくなってしまいました。
基本的に祁門県にある国営祁門製茶工場で作られるものが上質な茶葉を作っており、周囲の中小の民間製茶工場ではランクの落ちる低級品~中級品を中心に茶葉生産が行われています。本来、職人の手によって非常に複雑で手の掛かる全17の生産工程を経て作られる紅茶ですが、これら上質な茶葉は祁門紅茶の生産量の5%以下とも言われています。

気の影で、生産工程を大幅に簡略化した粗悪な茶葉が非常に多く出回っており、近年では上質な茶葉を手に入れることは非常に困難です。
このような粗悪品は、祁門県で収穫された茶葉を武夷山、あるいはその周辺の製茶工場へ持ち込み、正山小種として加工し、それらを再び「祁門紅茶」として流通させたり、そのまま「正山小種」として市場へ流されることもあります(正確には正山小種を名乗ることもできない)。このことは中国の茶市場全体の品質、信頼性の低下を招いています。
また、祁門県のもう一つの特産である石灰石の採掘による環境破壊、茶樹の老齢化、機材の老朽化、跡継ぎの問題など様々な問題を抱えており、これらが上質な茶葉生産の妨げにもなっています。

産された紅茶の殆どが輸出用で国内消費は微量。
今まで一子相伝で完全に秘密とされてきた製造法も、国際競争力が年々弱る傾向にあるなかで改良が進められ、かなりオープンになってきました。
茶葉は比較的小柄で長く細くよく撚られてツヤがあり、その辺りは見た目も重視する中国茶の特徴がよく出ています。
水色はオレンジ色。長く抽出しても苦味が出にくいのが特徴で、1杯目はストレートで風味を味わい、2杯目は是非ミルクティでどうぞ。

祁門紅茶を細工した工芸茶。祁門牡丹茶。
祁門牡丹