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白毫烏龍茶(東方美人)

毫烏龍茶(はくごう-)は、台湾北部の苗栗県、新竹県、桃園県、台北県、新北市、宜蘭県など主に台湾北西部地域で産出される発酵度の高い半発酵茶、青茶(烏龍茶)。収穫は毎年6月頃の1回のみで、生産量が少なく需要に供給が追いついていない高価なお茶です。

種は、青心大冇種、青心烏龍種、白毛猴種(坪林地区の一部)、大慢種(坪林地区の一部)、黄心烏龍種(苗栗県頭屋地区)、台茶15号”白燕”(白毛猴種を品種改良した茶種)、台茶17号”白鷺”。近年は金萱、翠玉、四季春も使われます。白毛猴種、大慢種、黄心烏龍種は生産量が非常に少なく、特に白毛猴種は茶葉の見た目が非常に美しいことから珍重され、市場では100g辺り数万円の値が付くなど高値を呼んでいます。また以前は烏金烏龍種からも作られていましたが、現在の生産量は極小規模です。日本人が想像する東方美人の香りは、主に青心大冇種から作られる物です。

家文化を代表するお茶で、様々な名称があり、呼び方が最も多いお茶としても有名。
日本では英名「Oriental Beauty(オリエンタルビューティー)」の訳語である「東方美人」の呼び方をされる事の方が多い。
主な呼び方は以下の通りですが、時間の経過と共に出自がわからなくなったものや、諸説有り議論の対象となっているものがあります。

・OrientalBeauty (オリエンタルビューティー)
→英国ビクトリア女王が名付けたとも言われているが、年代が合わないため誤認と思われる。

・東方美人
→OrientalBeautyの訳語。主に東アジアで多用される最も一般的な名称の1つ。産地では単に「美人茶」と呼ぶこともある。

・白毫烏龍(はくごうウーロン)
→茶葉に小さな白い産毛(白毫)が沢山ついていることから。”東方美人”と同じく最も一般的な名称の1つ。

・フォルモサ烏龍
→フォルモサ(Formosa)とはポルトガル語で”麗しの島”という意味で台湾島の事を指す。欧州に於いて台湾を代表するお茶であることから。

・香檳烏龍(シャンピンウーロン)
→香檳とは中国語のシャンパンの事で、ヨーロッパで「東洋のシャンパン」と賞されたとことから名付けられた。また、東方美人に洋酒を少し加えるとシャンパンのような味になるからという説もある。

・五色茶
→茶葉が白色/黄色/紅色/褐色/緑色の5色であることから。

・膨風茶
→台湾語で”ほら吹きのお茶”。主に新竹県北埔地域で呼ばれる。下記参照。

・椪風茶
→膨風では漢字がよくないということで「椪」を当てたという説と、膨風を客家語で椪風と書く事からなど諸説有り。主に新竹県北埔地域で呼ばれる。

・吹牛茶
→客家語で”ほら吹きのお茶”。

・番庄茶、番庄烏龍
→番庄とは”西洋人”の事で、欧州向け輸出茶であったことから地元でそう呼ばれたという説。主に苗栗県頭份、頭屋、三湾で呼ばれた。

・著蜒茶
→著蜒とは”虫食い”という意味で、ウンカによる食害で作られる事から。

・福寿茶
→1980年代の時の台湾副総統”謝東閔”により名付けられた名称。特に苗栗県産のものを指す。

・頭份茶
→代表的な産地である苗栗県の地名。

以上の他に、冰風茶、煙風茶、蜒仔茶という名称の他、特に発酵度の高い物は紅茶と呼ぶ地域もある。

方美人はウンカ(小緑葉蟬/チャノミドリヒメヨコバイ)と呼ばれる茶樹の害虫による食害を利用して作られるお茶で偶然の産物です。
東方美人というお茶が確立されるまでは、芽吹いたばかりの茶の新しい芯芽を食い荒らすウンカの食害にあったお茶は商品価値がないために破棄されていました。
1900年代初頭、ウンカの大発生でお茶が不作になったため、茶農家が苦肉の策でウンカの食害に遭った茶葉を試しに製茶したところ同然にも香り高く美味しいお茶ができたため、当時茶貿易で台湾に滞在していた西欧人商人に飲んで貰ったところ評判を呼び、高値で買い取られました。英国王室の献上茶にもなります。しかし、農民がこの事を故郷の村で話したところ信じて貰えず、このことから「膨風」(ほら吹き)のお茶、「膨風茶」と呼ばれるようになりました。当時は「大慢種」から作られていました。

ンカは全長5mmほどの緑色をした小さな幼虫で、農薬や除草剤を散布するとウンカが発生しなくなるため無農薬栽培されます。
日本でよく見られる整然とした茶畑ではなく、雑草が生い茂った一見して放棄された農地のような茶畑です。ウンカが発生する時期になると茶農家は僅か数ミリの害虫ウンカとの戦いの日々で、東方美人を作る農家には嫁のなり手がないと言われるほど大変な時期を過ごします。
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ウンカは初夏(二十四節気の芒種のころ旧暦4月末から5月初旬頃。新暦6月初旬頃)に茶畑に突然大発生する茶樹にとっての害虫です。100種類以上確認されており、ある日突然大発生するメカニズムや発生源は現在も解明されていません。お茶の新芽を好んで食い荒らしますが食べ尽くすことはなく、数カ所噛んでは他に移ることを繰り返し、特に香り高い新芽にのみ食害を及ぼすと言われています。
ウンカの食害に遭ったお茶の葉は茶自身の自発酵(酸化)とウンカの分泌液(これが香りの決め手になる)により成長が止まり、赤く変色して枯れたような状態になります。この変色した茶葉のみを丁寧に一芯二葉で手摘みし製茶します。

東方美人は青茶(烏龍茶)の中でも発酵度の高いお茶で、発酵度は60~80%と重発酵で比較的紅茶に近い烏龍茶です。しかし近年では発酵度30~40%の軽発酵で生産されることも多く、重発酵のものより香りは控えめですがフレッシュで繊細な味わいに人気があります。(近年の台湾茶は東方美人に限らず軽発酵茶が主流。重発酵は少なくなっている。)

東方美人は茶樹そのものの成長や品質のほか、ウンカ発生のタイミング、発生具合、食害の状態など様々な要因がお茶の出来映えに影響するため、生産の難しいお茶でもあります。このため、近年の東方美人の人気で茶葉の消費は伸びているにもかかわらず生産量は増えていないのが現状で、このことから高価な茶葉となっています。英国をはじめとした西欧諸国のほか、台湾国内、日本、香港(最近はプーアル茶ブーム)、ロシア、中国大陸で大変な人気があります。1940年代頃には旧ソビエトにも輸出され、食通で有名なスターリンも東方美人を愛した1人とも言われています。

られる品種により風味が異なり、白毛猴種は水果香(梨やリンゴの様なフレッシュな香り)、青心烏龍種は蜜香(蜂蜜を思わせる芳醇な香り)、青心大冇種・台茶15号・17号は花香(蘭を思わせる酸味のある花の香り)が多い印象です。多くの人が想像する”花のような東方美人らしい香り”の多くは青心大冇種です。
商品価値の高めるために、茶葉の見た目を美しくしたりお茶の風味を引き立たせるなどの理由から、白毛猴種と青心大冇種を製茶段階でブレンドして出荷されている茶葉もあります。(これ自体は悪いことではありません)

インドのダージリンの一部(キャッスルトン茶園など)もウンカの食害を利用したお茶で、いわゆる「マルカテルフレーバー」(マスカット香)はウンカの分泌液により生まれます。この事から(青心大冇種の)東方美人とダージリンの香気はよく似ていますが、東方美人とひとくちに言っても産地や茶樹、製茶法により様々な香りの茶葉がありますので、飲み比べるのも面白いですね。

だ、近年では中級品以下の茶葉やベトナムなど海外生産の茶葉に人工的に香りを付けた茶葉を東方美人と称して販売される事も多く注意が必要です。
日本国内はもとより、台湾国内でも有名観光地の茶芸館や土産物店などでそういった粗悪な茶葉が販売されている事があり、人工香料などで”それらしく”香りがつけられている為に素人目には区別が付かないことがあります。一昔はわざとらしいほど強い香りをつけたものが殆どでしたが、最近ではほんのりと香り付けして本物そっくりの茶葉まで登場し、ますます見分けが難しくなっています。
ただ、香料で香り付けされた香気成分は揮発性のため、お茶を淹れると1~2煎でほとんど香りが抜けてしまい、また茶葉の状態では封を開けて数日放置すると香りが抜けてしまいます。茶水の表面に油のようなものが浮くこともあります。しかし、中にはジャスミン茶のように天然の花びらで東方美人ひそっくりに香り付けしているものもあり、こうなるともう別の製品として売った方が良いのではないかと思えるほど、精巧に作られているものもあります。

東方美人の中でも特に希少性が高い白毛猴種の東方美人。
写真は白毛猴東方美人のなかでも特に産毛のついた芯芽の割合が多い超級品で、市場には滅多に出ない。
白毛猴東方美人超級茶葉

一般に最上級品、特級品として流通する青心烏龍種の東方美人。
五色茶と呼ばれる通り色とりどりの茶葉が見える。芯芽を多く含む。このクラスは高値が付く。
東方美人最高級茶葉

中級~上級品として流通する青心烏龍種の東方美人。
特級グレードの茶葉と比較して芯芽が少なく、全体的に黒っぽい茶葉で占められる。
東方美人上級

白毛猴東方美人の茶葉を拡大撮影した物。
茶水の表面には、この産毛が一面に浮かぶ。
白毛猴東方美人超級2

白毛猴種東方美人の茶殻。芯芽がそのままの形で残っているのがわかる。
このように美しい茶殻となるには、製茶に非常に高度な技術を要する。
白毛猴東方美人超級茶殻